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お腹が出てさえいればメタボ? 「らく朝の間違いだらけの健康法」 第8話 [コレカラ(リクルート)]

 食欲の秋。ついつい食べ過ぎてしまう季節ですよね。そこで気をつけたいのがメタボ。でも、相手のお腹を見ながら「おい、それ、メタボじゃないの」、よく言われるセリフです。「ついにメタボになっちゃったよ」とお腹をさする人もいる。でもね、お腹が出てれば、それが即メタボってわけじゃない。
 もっとも「復囲、男性85センチ、女性90センチ以上」、なんてメタボの診断基準が有名だから、ついそう思ってしまうのも無理はないよね。

 ある自治体で、メタボ講演会の記念品にメジャーを配ろうということになりました。「じゃあいっそのこと90センチしかないメジャーを配りましょう」。つまり、端と端が届かなかったら一目瞭然、とても分かりやすいメジャーなんですね。でも「両端が届かないメジャーなんて駄目です」と、反対意見も半分。じゃあ折衷案だというんで、90センチのメジャーをゴムで作った、ってナンにもならなかったりして。

 誤解があるのは、「お腹が出てさえいればメタボ」だと思っている人がいます。そんなこと言ったら、妊婦さんは全員メタボだもの。そうじゃないんですね。たとえ体重が同じでも、内臓の周辺に脂肪が付いているタイプの肥満(内臓脂肪型肥満)は、皮下脂肪に脂肪がついている肥満(皮下脂肪型肥満)に比べて心筋梗塞になりやすいことが分かっています。

 内臓脂肪型肥満はただでさえ心筋梗塞になりやすいのに、その上さらに「脂質の異常」、「高血圧」、「高血糖」が重なると、なんと心筋梗塞の発症率が何十倍にも跳ね上がっちゃう。これがメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)なんです。

 やっぱりメタボは肥満がベース。じゃあダイエットだって、いきなりキャベツしか食べないなんて人が出てくる。「でも痩せないよう」・・・どうやって食べてるか聞いてみると、ドレッシングとマヨネーズをたっぷりかけて食べてた。それじゃ痩せるわけがない。ドレッシングもマヨネーズも油がたっぷりだから、大変な高カロリー食品なのです。

 結局は体重のコントロールが一番なのですが、お薦めはカロリーを控えたバランスの良い食事と、ウォーキングなどのエアロビクス(有酸素)運動の組み合わせ。ちゃんと内臓脂肪が消費されますし、血圧も脂質も血糖も改善してきます。
 そして膝の痛い方には水泳がお勧めですね。とくに水泳の一番いいところは、喉が渇いたらすぐに水が飲めるところ、こんな便利なスポーツ他にない、っておいおい、無茶言うんじゃないよ。


漢方薬のヒミツ  「らく朝の間違いだらけの健康法」 その7話 [コレカラ(リクルート)]

 江戸時代は、医者の看板をあげればその日から医者。そこで“にわか医者”なるものもいて、知ってる薬の名前は葛根湯だけ。仕方ないから、どんな患者が来ても葛根湯を出したという。
 「ほう、頭が痛い、今いいお薬をあげるからね、おい、葛根湯をお出しして。次の方は、腹が痛いのね、よしよし、おい、葛根湯をお出しして。次は、足が痛いのか、葛根湯をお出しして。さて、おまえさんは、どうしましたな」
「いえ、こいつが足が痛てえってから、私は付き添いで」
「ああ、付き添いの方ですか、葛根湯をお出しして」
これ即ち「葛根湯医者」という有名な小噺。

 ここ数年、沢山の方が漢方薬を飲むようになりました。巷でも漢方薬のことが話題にのぼったりします。
「漢方薬もいいけど、効果が出るのに時間がかかるからねえ」
「そうよね、じわ~と効いてくるんでしょ。副作用がないのはいいけどさ」
 どこにでもありそうな会話ですね。でもこれ、じつは間違いだらけの会話、二人とも間違っているんです。

 さきほど出てきた葛根湯、これは急性熱性疾患に使用される漢方薬、ひらたく言うと風邪薬です。発熱の初期に用いると、緒症状を緩和し見事に解熱します。また桂枝加芍薬湯は急な腹痛や下痢に威力を発揮し、五苓散という漢方薬は、二日酔いの吐き気にさえ効いちゃう。もう立派に即効性があるんです。

 しかし漢方薬といえども副作用がないわけではありません。西洋薬に比べるとはるかに(比較にならないほど)副作用は少ないのですが、皆無ではないのです。どうです、ちょっと漢方薬の印象が変わったでしょ。
 じゃあ、この会話がまるっきり間違いかというと、そうでもないんですね。漢方薬は体質改善にとても効果があります。アレルギー体質、虚弱体質、冷え症、更年期障害など、漢方薬を服用することで徐々に改善してくれます。つまりこの場合は「じわ~と効く」んです。

 ただ、漢方に関する一番の誤解は、西洋薬のように症状で薬を選ぶと思われていることでしょうね。漢方の大きな特徴は、同じ症状でもその人の体質(「証」といいます)によって選択する(効く)薬がまるで異なることです。ということは、漢方薬は専門の医師に処方してもらうのが一番なんですね。
 少なくとも、薬局で自分勝手な判断で薬を手にしない。せめて漢方を熟知した薬剤師さんに相談するくらいのことはしたいもの。「効く」ためには「聞く」、これが漢方選びの極意のようで。

水泳のススメ 「らく朝の間違いだらけの健康法」 大6話 [コレカラ(リクルート)]

 「最近、歩くと膝が痛くってね。だからさあ、今度のゴルフ、悪いけど私、失礼するわ」
 「そう、じゃあ安静第一ね、動かない方がいいわよ」
 「でも動けないってつまんないのよ。ストレス溜まっちゃうわよ」
 「じゃあさあ、これからストレス解消にパーと、ケーキビュッフェにでも行かない」
 「いいわねえ、おもいっきりスウイーツ食べてこようよ」
どこかの喫茶店、中年女性が二人でお茶をしながら・・・なんて光景が浮かんできそうですね。でもこの会話、凄く怖い。こんなことしてたら大変なんですから。

 ある程度の年齢になって膝が痛むようになったら、これはもう老化現象と思った方が良いようです。膝の関節をスムーズに動かすためのクッション(軟骨)が、長年の摩擦で摺り減ってきている証拠。レントゲン写真を撮ると、骨に棘(トゲ)が生えてる。これが「変形性膝関節症」という病気なのです。人間も骨も、摩擦が強いとトゲトゲしくなるものなのですね。
 
 こうなると、体重がもろに膝にくる。それが膝の関節の炎症を引き起こして痛みが出るのです。たとえば体重が1キロ増えても、膝への負担は1キロじゃあ済まない。数キロになります。とくに歩き出しの時には、それ以上に負担がくる。だからこの病気は歩き出しの時に痛い。
一番手っ取り早い改善方法は、減量なんですね。体重が減ることで膝関節の負担が減る。すると炎症が治まって痛みが軽くなる。まあ、当然の理屈ですな。

 こんな時、ストレス解消だっていうんで、ケーキビュッフェなんぞに行ってごらんなさいな、カロリーオーバーで自分のお腹がモンブランになっちゃうから。こうなると膝はもっと悪くなって、腫れてくるようになるんです。
だから安静第一どころか、むしろ運動が大切。ところがです、これが難しい。だって、膝が痛いと運動ができない。だから痩せられない。もうこうなるとジレンマですよね。
 
 こんな方にお薦めの運動が、水中ウォーキング。浮力が膝への負担を軽減し、水の圧力に抗して歩くから膝の周囲は筋力アップになる。もう最適なんです。じゃあプールの帰りにケーキビュッフェに寄る?、あのねえ、それはないでしょ。ええ、らく朝はうるさいから連れて行かないって、いくらプールの後だからって、そんな水臭いこと言わないでよ。

出血大サービス 「らく朝の間違いだらけの健康法」 第5話 [コレカラ(リクルート)]

 心配で胃が痛むなんてこと、どなたにも一度くらいは経験があるだろう。
「もうストレスでさあ、毎日胃が痛んでね」
「おいおいそれ絶対、胃潰瘍だよ。もっとも俺は大丈夫だけどな。毎日飲んでるけど、痛くもなんともないもん」
「いいよなお前は。同じ仕事してんのになあ」
「ストレス解消にヤケ酒を飲んでるからね。それがいいんだよ。これからビールでも飲みに行こうか」
「馬鹿言え、俺は胃カメラでも飲みに行くよ」
いかにも会社の片隅でありそうな会話。だけど、ストレスに強そうな、胃の痛みなんか全然ない彼の方が、じつは胃潰瘍で酷い目に遭うかもしれないとしたら、意外でしょ。

 胃が痛むからといって、胃潰瘍があるとは限らない。ストレス潰瘍といって、強いストレスで胃潰瘍ができるのは事実だが、胃の粘膜が荒れる程度で済むこともかなり多い。こういった状態を粘膜の糜爛(びらん、と読みます)といって、けっこう痛みを伴ったりする。
こんな時はストレスをさけるのが一番だが、ストレスはそう簡単にはなくならない。ストレスをまともに受けずに、さっとかわして土俵の外に追い出すのが一番。そう、つまり「肩すかし」だね。上手なストレス処理は、現代人にとっては必須のテクになっちゃった。やな時代だね。

 ヤケ酒がお薦めできないのは当然だが、ここで困ったことがある。胃潰瘍があっても、まったく痛みを伴わない場合も決して珍しくはないのだ。本人には自覚がないから、胃潰瘍があっても飲んじゃうんだね。ストレスはある、ヤケ酒は飲む。潰瘍のほうだってたまったものじゃない、どんどん悪化する。でも本人は気がつかない・・・これ結構怖いよね。潰瘍とは粘膜がどんどん掘れてくる病気。その下には血管が走ってるんだよ。

 部下を引き連れて「ヤケ酒だあ」って、何軒も梯子して、部下に払わせるわけにいかないってんで自腹を切って、「今日は俺のおごりだ、出血大サービスだ」って。そのうち本当に出血大サービスになっちゃう。
気が付いたら潰瘍から出血して、吐血。救急車で病院へ。下手をすると緊急手術にもなりかねない。飲み屋で自腹を切って、その直後に手術室でも自腹を切ったなんてね。どうか一晩に2回も自腹を切ることのないよう、気を付けようじゃありませんか。

酒は飲んでも良いのか悪いのか 「らく朝の間違いだらけの健康法」 第4話 [コレカラ(リクルート)]

 「酒は百薬の長」、飲兵衛にとっては心強い言葉だが、どっこい「酒は命を削る鉋(ルビ:かんな)」とも言われてきた。さあ、どっちが正しいのだろう。
 西部劇ではお決まりだが、ストレートのウイスキーをガンマンが一気に飲み干すシーンがある。何とも男臭くて絵になるが、あれって食道ガンや咽頭ガンの原因になる。強い慢性の刺激はガンのもと、あんなことを毎日してたら、まるでガンと闘っているようなものだ。だから彼らのことを“ガンファイター”と呼ぶんだね。

 アルコールとガンとの因果関係は知られていて、食道ガンや咽頭ガンだけではなく、肝臓ガン、大腸ガン、乳ガンもアルコールの摂取量が増えるほど発症率は高くなる。それだけではない、アルコールが肝炎や肝硬変、慢性膵炎の大きなリスクになることはすでに一般常識だ。「酒なんて身体に悪いに決まってる。一生に一度、三三九度の時だけで十分だ」、という人もいるだろう。
 
 健康のために禁酒した酒好きの男がいた。ある真夏の夜、友達と二人でトンカツ屋へ行ったが、その友達「いやあ、禁酒した人の前で悪いねえ」と言いながら、冷えた生ビールをグイグイあおって、あげくに「ぷはー、旨い」。これを目の前でやられたら、もう拷問に等しい。禁酒した男はそれを血走った眼でみつめながら、心の底で思ったものだ。「この野郎、絶対に俺の方が長生きしてやる」。

 ところがですねえ、じつは禁酒する方が長生きできないんだとしたら、この人ショックだろうね。統計を見る限りでは、全く飲まない人より、適量の飲酒をする人の方が長生きしている。しかもアルコールは善玉のコレステロールであるHDLを増やすから動脈硬化が抑えられる。飲酒する人の方が心筋梗塞や脳梗塞の発症率は少ないのだ。

 「なんだ、じゃあ大いに飲もう」となりそうだが、残念でした。飲みたいだけ飲んでも良いって話じゃない。適度な飲酒量ならば、ということであって、飲みすぎれば当然のように死亡率は高くなってくる。
では酒の適量とはというと、一日に日本酒なら1合、ビールで中瓶1本、焼酎ならダブルで1杯、ワインならグラスに2杯だ。しかも週に2日は休肝日を設けて、しかもタバコは吸わないという条件付きで、ようやく酒は「百薬の長」となる。しかしタバコをくわえて梯子酒する人にとっては、酒は「命を削る鉋」となるんだね。
さあどっちを選択するか、う~ん微妙だなあ、って悩むことないでしょ。

活性酸素の恐怖  「Drらく朝の生活習慣病で一席」 (2009年、連載は終了しました) [オアシス(中央労働災害防止協会)]

 あるタバコメーカーが「絶対に肺ガンにならないタバコ」を発売しました。これはマスコミでも大評判で、記者会見が行われました。記者も興奮に包まれて、
「画期的ですねえ、肺ガンにならないタバコって、どんな秘密があるんですか」
と質問、それにメーカー側は胸を張って答えました。
「このタバコ、絶対に火がつかないんです」。
何にもならないだろ!

 タバコが肺ガンの原因になるってことは誰でも知ってます。ふつうは、肺ガンなら肺、胃ガンなら胃病気と思いがちですよね。ところがどっこい、ガンって、じつは細胞の病気なんだってこと、知ってました?
人間にはなんと細胞が60兆個もあると言われています。でも一体誰が数えたんだろうねえ、暇な人がいたもんだ。一つ数えるのに1秒かかるとして、60兆数えると、1兆分かかる、ということは・・・結構、私も暇だね。
さて、これらの細胞は古くなると細胞分裂をして、日々新しいものに入れ替わっています。その時には、細胞は自分とまった同じ細胞を作らなくてはなりません。もし膀胱の細胞が心臓の細胞を作ってしまったら、これはもう大変です。膀胱の中に心臓ができちゃう。下腹で動悸がしても、これは気持ちが悪いよね。

 では細胞はどうやって自分と同じ新しい細胞を作るのでしょうか。細胞はまず自分の遺伝子であるDNAの鋳型を作り、その鋳型に合わせて同じDNAを再生します。DNAというのは、細胞を作る時の設計図みたいなもので、ここに書いてあるとおりに部品(タンパク質)を組み立てていくと、まったく同じ細胞を作り出すことができるわけです。

 ところが、それでなくたって物凄く複雑な工程を経て細胞を作るわけだから、小さな間違いだって起きようというもの。もしDNAが自分の鋳型を正しく作れなかったら、これは大変なことになるんですね。
言ってみれば、人間は細胞を鋳型を使って再生しているようなもの。たとえば石膏でできたビーナス象、あれだってブロンズの彫刻なんかを鋳型にして作ったものでしょ。でも鋳型を作る時、作った鋳型のビーナス像の鼻の頭に蚊が止まったとする。すると、鼻の頭に蚊が止まってるビーナス像ができちゃうわけ。そんなビーナスを作ったら、現場の親方は怒るだろうね。
「蚊が入ってきてたんだろ。なんで作業場で蚊取り線香たいてないんだよ。たるんどるぞ」。
「すみません、キンチョーが足りなかったもので」。

 ここで、鼻の頭に蚊が止まったビーナス像、廃棄処分になれば問題はないのですが、チェックをすり抜けて出荷されたとする。すると、そんなビーナス像がしだいに広まって、次々にともっと変な、たとえば鼻の両脇に蝶が止まっているビーナスができ上ったりすることだって考えられます。こうしていつしか、元のビーナスとはかけ離れた“異常なビーナス”ができ上ったとしますよね。これこそがガン細胞の始まりなのです。
じつは人体でも似たようなことが起こっていて、何かの原因によってDNAが傷ついたりすることがあります。あるいは、細胞分裂する際に鋳型を作りますが、その時にちょっとしたミスが起こったりもします。すると元と同じ細胞ができずに、ちょっと変な細胞ができたりする。まあほとんどのちょっと変な細胞は壊されたり、自ら死んでしまったりするのですが(これを細胞の自殺といいます)、中にはしぶとく生き残る奴もいる。こうやって生き残った“変な細胞”こそが、ガン細胞の始まりなんです。つまりガンというのは、DNAの異常によって起きてくる病気ということが言えるわけです。

 さあそうなると、DNAを傷つける可能性のあるもの、それは即ち発ガン性があるということになるわけです。その代表例がタバコだけど、最近話題の「活性酸素」も、DNAを傷つける代表格なのです。
活性酸素は、酸素を消費することで作られる非常に反応性の高い酸素のことです。これが色々なものと反応して相手を酸化させてしまう。酸化とは馴染みのない言葉ですが、鉄が酸化されると錆るのと同じで、体内をあちこち錆び付かさせて傷付けているわけなんです。DNAを傷付ければガンになるし、また動脈の壁を傷付ければ、そこからコレステロールが血管壁に入り込んでそこでコレステロールの塊を作り、これが動脈硬化の原因になるんですね。

 今や日本人の死亡原因の代1位はガン。第2位が心筋梗塞で、3位が脳卒中です。心筋梗塞と脳卒中は動脈硬化で起きてくる疾患ですから、活性酸素は日本人の死亡原因のトップ3、すべての原因になっている恐ろしい物質ということになります。
呼吸によって吸い込んだ酸素の数%が活性酸素になります。つまり生きている限り、人間は活性酸素の恐怖から逃れることはできないということになります。それだけじゃないんですね。タバコの他に、普段口にする人工添加物、水道水、あるいは外に出れば太陽の紫外線や電磁波、それにストレスなど、活性酸素を増やしてしまう要因は、この現代社会には山のようにあります。現代人は、常に活性酸素を増やしながら生活しているといっても過言ではないのです。

 この活性酸素による酸化を抑えてくれるのが、これまた今話題の抗酸化食品ビタミンCやE、赤ワインで有名なポリフェノールや緑茶のカテキンなんかもそう。だから抗酸化食品はガンや動脈硬化を予防してくれるわけです。抗酸化食品は、体内で一生懸命活性酸素をやっつけてるんです。抗酸化作用を発揮しながら、「降参か、こうさんか、こうさんか・・・」って、言うかどうかは知らないけど。でも大いに、抗酸化食品は摂りたいものですね。

気管支喘息  「Drらく朝の生活習慣病で一席」で連載中 [オアシス(中央労働災害防止協会)]

  病気見舞に行く時って、結構悩んだりするものだ。手ぶらでも行きにくいけど、だからといって糖尿病の方にケーキというわけにもいかないし、胃潰瘍で入院している人にビールの詰め合わせというわけにもいかない(当たり前だ)。
 
 どうも食べるものは心配だからというので花を持って行く人が多いようだ。しかし中には花粉が苦手という方もいらっしゃる。病室に花粉が飛ぶと、アレルギーを起こして具合が悪くなる場合もあるから、何でもかんでもお見舞いに花、というのは気をつけた方が良いかもしれない。
中には瀬戸物が駄目って人がいて、花粉は全然平気なんだけど、花を生ける陶器の器にアレルギーがあるんだって。こういうアレルギーのことを、医学用語で「花瓶(過敏)症」っていう。あまり信じない方がいいけど。

 アレルギーが原因で起きてくる病気にはいろいろあって、皆さんご存知の花粉症やアトピー皮膚炎もそう。こういった病気をひっくるめてアレルギー性疾患というが、いろいろな病気が知られている。中でも、とても辛い症状があって、時には命にかかわるというアレルギー疾患がある。それは「気管支喘息」だ。
 夏場の当直の夜、台風が来たりすると病院の当直医は覚悟をするものだ。「今夜は寝られないぞ」って。なぜか低気圧が近づくと、気管支喘息の発作を起こして夜中に救急外来を受診する患者さんが多くなる。自然環境の変化が発作の引き金になるから、ああ人間も地球上の生物の中の一つなんだって思ったりする。この喘息発作、受診する患者さんは見るからに辛そうだ。

 ところで、気管支喘息とはどんな病気なのだろう。肺の中には気管支という空気の出入りする細い管があるが、ここの粘膜が過敏になっていて、少しの刺激でも非常に強いアレルギー反応を起こすことがある。そのため、空気の通り路である気管支が狭くなってしまうことによって起きてくる病気だ。
アレルギーの原因は、ハウスダストであったり、ダニのような小さな虫であったり、まあいろいろとあるが、これらの物質をアレルゲンという。これら様々なアレルゲンを吸い込むと、気管支の内壁でアレルギー反応が起きてくる。

 実際にはどうなるかというと、アレルギー反応によって気管支はギューと縮まって細くなり、空気の通り道が狭くなってしまう。それでも、息を吸う時には肺は広がるから、吸う時には何とか空気は入ってくる。しかし、吸った息を吐こうとする時には、じつは肺は縮むようにできている。アコーディオンだってそうでしょ、空気を入れる時には大きく広がって、音を出す時にはぐーと縮めて空気を出す。同じ理屈だ。
ただでさえ細くなってる気管支が、吐くときには肺が縮むからもっと狭くなるわけ。そうすると、肺の中に入っていた息(空気)が外に出て行かないんだね。こうなるととても苦しい。だって吸った息が吐けないなんて、こんな辛い事ないもの。何とか息を吐こうと、ぜーぜーぜーぜーすることになる。このような状態を、喘息発作と呼んでいるのだ。

 重症の喘息発作時には気管支が閉塞して窒息する可能性もあるから、治療開始まで一刻の猶予もない。「重症です」と呼ばれると、主治医はフルスピードで病室に駆けつけることになる。患者が喘息、主治医は全速、ということになるわけだ。
 こんな状態が長く続くと、吐き出されなかった空気がずっと肺の中に居座ってしまうことになる。そして最後には肺の中を古い空気でいっぱいにしてしまう。こうなると非常に困ることになる。言ってみれば、アクティビティの失せた長老が重要なポストに居座って、若手の活躍の場がなくなった組織みたいなもので、ついには機能を果たすことができなくなってしまう。

 肺がこんなことになるとどうなるか、酸素をたっぷり含んだ新しい空気が肺の中に入ってこない。つまり換気ができなくなって、活動に必要なだけの酸素を取り込めなくなるわけだ。この状態を「肺気腫」といって、少し動いただけでも息切れがするなど、日常生活でさえもしんどくなってしまう。
 肺気腫を招いてしまう最大のリスクは、何と言ってもタバコだ。もしも気管支喘息と診断されたら、ひどくなる前に即禁煙しよう。タバコに加えてストレスや過労も悪化要因だから、ストレス解消にタバコ、なんてもっての他。
これは気管支喘息の方に限らないけど、ふだんから気持ちを明るく、ポジティブな生活をしたいものですよね。もちろんタバコも遠ざけて、「毎日ニコチン」の生活から、「毎日ニコニコ」の生活に変えようじゃありませんか。

思い出の渚 ~夏の太陽は良いの悪いの 「らく朝の間違いだらけの健康法」 第3話 [コレカラ(リクルート)]

 夏には褐色の身体があちこち活発に動き回る、といってもゴキブリのことじゃない。「君を見つけたこの渚・・・小麦色した可愛い娘」、ああ夏だなあ。太陽も眩しいけど、ビキニも眩しい。ビーチには若い健康的なエネルギーが溢れてる。
 中年男性だって負けてはいない。日焼けした肌に白いシャツ、足元はと見れば、これまた白いキャビンシューズ。いかにもお洒落で健康的だ。でも夏の日焼けが健康を約束すると思ったら、これはとんでもない大間違いなんだね。
 じつは日焼けの本体は「火傷」。紫外線によって皮膚の細胞のDNAが傷つくことで、様々な障害が現れるのが日焼けなのだ。こんなことを知っちゃうと、ちょっと不気味でしょ。
 日焼けは皮膚がんの重大な原因だ。赤道直下では皮膚がんの発症率が明らかに高い。子供は太陽の下で大いに遊ぶべし、なんて言われたけど、小児期に過剰の紫外線に暴露すると、歳を取ってから皮膚がん発症のリスクが数倍になる。それだけじゃない。紫外線によって、皮膚で活性酸素が作られ、これがガン、動脈硬化、はては寿命の短縮まで起こしてくるってんだから、太陽光線を浴びるのも命がけだ。
 ところで、世界でもっとも皮膚がんのリスクの低い人は、ドラキュラ伯爵だそうな。でもね、ドラキュラって、きっと骨粗鬆症に違いないよね。骨はスカスカで腰痛持ちだよ絶対。
 紫外線によって、皮膚でビタミンDが作られることはよく知られている。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨粗鬆症を予防する。日光浴不足の人は骨密度が低い上に、ビタミンDで筋力低下も起きるから要介護となる確率も高いというデータがある。さらにビタミンDは、免疫機能を強化し、感染症の予防に役立っている上に、ガンを予防する効果もある。だから大いに太陽を浴びるべしなのだ。
 「アホとちゃうか。活性酸素を増やしたあげく、皮膚がんになったら元も子もないやんか」、う~ん、ごもっともです。「冗談じゃねえやい。お天道様の下をどうどうと歩けなくてどうすんでえ」、それもごもっともです。さあ、どうしましょうね。まあものごとには“ほどほど”というものがありますからね。太陽とのお付き合いも適度にして、「もう帰らない、あの夏の日」なんてことにならないよう、気を付けようじゃありませんか。

間違いだらけの会話  「らく朝の間違いだらけの健康法」第2話 [コレカラ(リクルート)]

 「今朝ね、満員電車で立ってたらフラフラしてさあ。もう倒れそうになっちゃってね」
 「お客さん、それ貧血だよ、貧血。帰りにレバーでも食べたら」
 「そうだなあ、今日は会社の帰りに焼き鳥屋にでも寄ってくか」
 「そうそう、それがいいよ」
 これは床屋さんでの会話。ご常連さんなんだろうね、散髪しながら隣でこんな話をしていた。どこにでもありそうな会話だけど、でもちょっと違うんじゃないの。
 よく満員電車で立っていて気分が悪くなる人がいる。気分が悪いったって、べつに隣の人に足を踏まれたわけじゃない。頭がふら~として、吐き気がして、ひどい時には倒れてしまうこともある。
 こんな症状を「貧血」ということが多いけど、一般に貧血というのは、血液中のヘモグロビンという成分が減ってしまった状態。ヘモグロビンは鉄を材料として作られるから、たしかに貧血の時にはレバーのような鉄分の多い食べ物はお薦めだけど、この場合は鉄を補給しても効果がないんだよね。
 立っていてフラフラするのは、急に血圧が下がって脳の血流が減ってしまったことによる症状で、これは貧血は貧血でも「脳貧血」といって、ヘモグロビンとは関係ないんですね。
 人間は立ち上がった時には血圧が下がるものです。そこで急に下がりすぎないように、自律神経が血圧の調節をしています。だから自律神経のバランスが悪くなると、立っている時などに急に血圧が下がってフラ~となる。よくある症状ですが、これは「自律神経失調症」の一つです。
 自律神経失調は、過労、寝不足、ストレス、酒、タバコなどが悪化要因になります。当然のようにレバーを食べても治らない。こんな時にですよ、帰りに焼き鳥屋に寄って、タバコ吸いながらビールを飲みすぎて、終電で帰って寝不足して、次の日に朝ご飯も食べずに出勤してごらんなさいな。自律神経失調はますます悪化、今度こそバタリとくるもんね。
 じゃあどうすれば良いのよって、早く帰って寝るのが一番。休養と睡眠、規則正しい生活は自律神経の元気の源なのです。
 もっともね、現座のクラブに入り浸って「レミーちょうだい」って言うのに比べたら、焼き鳥屋で「レバーちょうだい」って言ってる方が、体にも懐にも優しいかもね。レミーとレバー、そりゃ大変な違いだもんなあ!

あなたも適齢期(前立腺肥大症)  「Drらく朝の生活習慣病で一席」で連載中 [オアシス(中央労働災害防止協会)]

 最近あちこちで健康講演会なるものが開催されています。私も講師として招いていただいて、他の医師の話を聞かせていただくことも多いのですが、健康の話なんてものは聞いていて面白いものじゃないですよね。
 難解で、見るのも面倒くさいような細かいスライドを見せられて、面白くもない説明が延々と続いて、しかも専門用語はバンバン出てくるし、その上に部屋を暗くされた挙句、「寝ないで聞け」ってんだもん。そりゃあ無理ってもんだよね。だからこんな健康講演会なんぞを一般市民向けにやってごらんなさいな、客席はほとんど昼寝大会になっちゃう。
 人間というのは、どうやら不健康なことの方が楽しいと思うようにできているようです。昔から男の三道楽といわれてきたのが、「飲む、打つ、買う」。この三つに健康的なことなんか一つもないもの。「打つ」ったって、点滴を打つわけじゃない。博打だもんね。こんなの不健康の塊でしょ。
 たとえばパチンコだってそう。あれは不健康だからこそやっていて面白いんですよ。だから健康的なパチンコ屋さんなんてものがあったら、これは気色悪いよ。パチンコの穴に全部病気の名前が付いてたりしてね。脳卒中の穴、心筋梗塞の穴、ここは胃ガンの穴とか。「さあ、あなたの玉はどこの穴に入るでしょう!」なんて、気が滅入っちゃう。中に「前立腺肥大の穴」なんてのがあってね、そこに玉が入ってもなかなかチンジャラ出てこない。客も黙ってないよね。
 「店員さあ〜ん、ちっとも玉が出てこないよ」。
 「すみません、前立腺肥大は、出るのに時間がかかるんです。そのかわり、切れが悪いですからお楽しみに」
 やなパチンコ屋だね。
 ところで、おしっこが出るのに時間がかかる、尿の勢いが悪い、尿切れが悪い、こんな症状に心当たりはないでしょうか。これらの症状は「排尿困難」といいますが、ご存じ、前立腺肥大症の特徴的な症状です。
前立腺は男性にしかなく、一般的には爺さんの病気と思われがちですが、じつは50歳以上の男性は、5人に1人が前立腺肥大。あながち老人の病気ばかりとは言えないんですね。
 なぜ尿の出が悪くなるかというと、尿は腎臓で作られて、尿管という管を通って膀胱に集められます。膀胱である程度の尿量が溜められると、尿道という管を通って外に出るのですが、この間の通路がオチンチンなんですね、もちろん男性の場合だけですけど。
 さて、膀胱から尿道が出たすぐ先には前立腺という小さな臓器があって、尿道はまず前立腺の中を貫通します。言ってみれば、前立腺という臓器の中にトンネルを掘って、その中に尿道が通っているわけです。ちょっと分かり難いと思うので、こけしを例にしてみると、膀胱が頭で、オチンチンが胴体だとすると、前立腺はちょうど首の部分にあたるわけね。あまり想像したくないって・・・まあ気持はわかるけど。
前立腺肥大という病気は、この前立腺が腫れてくる病気です。ここが腫れれば、当然その中を貫通している尿道を圧迫するわけ。通路が狭くなれば出すのにより圧力が必要になるのは物の道理。つまりおしっこをする時に、なかなか出ないものだから、ちょっといきんで下腹に力を入れるようなる。「どうもおしっこの出が悪いなあ」って、そりゃ悪いはずです、管が狭くなってんだから。これがすなわち、排尿困難なのです。
 さっきこけしで例をあげましたが、前立腺はちょうど首の部分に当たります。首の回りが狭くなって圧迫する、つまりマフラーで首を締められて息ができないのと似たような状態ですね。ここでもてる男性にご忠告、振った女の子の手編みのマフラーなんか首に巻いてると、怨念でだんだん首がしまってくるかもしれないよ・・・ご用心、ご用心。
 前立腺肥大はあまりにもポピュラーな病気だけに、つい放っておく人が多いものです。しかし、放っておくと、いずれ膀胱の機能が破綻しかねないということは、知っておいた方がいいですね。
 尿の出が悪いということは、つまり尿を押し出す側にしてみれば、高い圧をかけなくてはならないということ。これは、膀胱にとってはかなりの負担になるわけです。こんな負担をかけ続けていると、膀胱の収縮する機能が悪くなり、尿が全部出なくなって、常に膀胱内に尿が溜まっている状態になります。この残っている尿のことを「残尿」といいますが、これが増えてくると、排尿後に「尿が出切っていない感じ」になります。これを医学用語で「残尿感」というんですね。ちなみに、たまに早く会社から帰ると、まだ仕事をしているような気になる、これが「残業感」。あまり信じない方がいいけど。
 でもこの程度じゃすまない。いずれはまったく尿が出てこない状態「尿閉」になることも少なくありません。しかも排尿に必要な膀胱機能が破綻して、おもらし、つまり失禁することにも。だから、排尿困難を感じるようになったら早めに治療した方が無難です。
 今ではいろいろな治療法が開発されており、内服薬も昔に比べるとずいぶん飲みやすくなりました。薬を飲むだけで排尿困難が改善される時代になったのですから、男性にとってはいい時代になったものです。首に巻いた手編みのマフラーのことまで面倒は見切れませんが、少なくとも膀胱出口での圧迫は、かなり改善可能だと思ってください。
 公衆トイレで、同じ年頃の人と連れション。思わず「どっちが早く終わるかしら」と、隣のおしっこが気になる歳になったら、もう前立腺肥大の適齢期です。遅れを取らないよう、早めに泌尿器科の先生と「お見合い」しようじゃありませんか。

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